みるく世にわが身を焦がす袋蜘蛛 | かぎやで風・NPO法人クリオン虹の基金

遠い人にも身近な友にも[コラム]~~かぎやで風~~

石を踏んだ足の痛みではなく、踏まれた石の痛みに軸足を置きながら、その折々、考えたこと、言うべきことを記します。

みるく世にわが身を焦がす袋蜘蛛【No.302】

2018.05.24

〈小満〉2018/05/21
 沖縄県民は今、実に悩ましい問いかけに直面している。それは、5月23日から2か月間にわたって行われる名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て工事の賛否を問う県民投票が始まるからである。
 「辺野古基地建設中止条令」の制定を目指す同会のホームページによれば、最低24,000筆(有権者の50分の1)と、県民の10分の1の 115,000筆の署名を目指すという。
 県民投票を推進する側の主張は、「住民投票」は、沖縄県民の民意を示す最後で最強の権利行使であると論じ、辺野古取消訴訟、不作為の違法確認訴訟、山城氏等の不当逮捕訴訟、県道70号文書開示訴訟などの、基地建設をめぐる司法への訴えも、ことごとく敗訴している。だから、憲法第95条【特別法の住民投票】「一の地方公共団体みに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」を、最後の拠りどころとして、辺野古新基地建設に歯止めをかけるために足を踏み出したという。
北上田毅さんの「チョイさんの沖縄日記」を拝見すると、K4護岸工事付近に生息する絶滅危惧種のヒメサンゴの海域汚濁がすさまじい。防衛施設局は護岸工事によって、ヒメサンゴに影響が出るとして、知事に特別採捕による移植を申請したが申請は却下されたことにより、防衛局は「汚濁防止枠を二重から四重にし、一日当たり石材投入量を半分にすれば、サンゴへの影響はない」と、工事を強行しているが、護岸工事の進行は暴力的に進められている。現在の上空撮影写真でみると、石材が海に投下されるたびに海面が白濁し、藻場が破壊されて様子が痛々しい。これは持ち込まれた石材が十分洗浄がなされないまま海中投棄が行われているのである。
 投票期間の2か月間に、辺野古の護岸工事はいよいよ完成し、土砂の搬入がはじまろうとしている。大浦湾は死滅の道へまっしぐらである。この重要な時期に「住民投票」に県民のエネルギーを分断してしまうことへ私は危惧する。
 このところ沖縄から届けられる声は、「オール沖縄」の組織基盤のきしみである。最近行われた市長選挙の結果を見ると、南城市を除いてことごとく「オール沖縄」の推薦候補が敗北している。特に、名護市長選挙の敗北は、辺野古基地建設の地元であっただけに、反基地をめぐる県民運動にとって、起死回生策はないだろうかと模索するのは理解できるが、果たして「県民投票」は、今、有効な反基地闘争の打開策になり得るのだろうか。
 反基地闘争には、いろいろな手法があって当然である。県民投票が目指す、県条令制定を目指す、24,000筆、県民の10分の1の115,000筆の達成は可能であろうが、さてその間に、辺野古新基地の護岸工事は完成し、土砂の搬入が始めてしまえば、県条例の制定によって、工事差し止めとして機能するだろうか。これまでも政府は、司法まで動員して工事を推し進めてきたのに、県条例の制定によって憲法第95条の【特別法の住民投票】の立法主旨に従うとは到底思えないからである。では、手を拱いているだけでいいのか? そう問われると明快な答が見つけられない。そのため、このコラムの冒頭で「実に悩ましい問いかけ」と、私が書き始めたのである。
あえて私の意見を求められれば、今、最優先すべきことは、翁長知事による「辺野古埋め立て中止」を明らかにすることである。その上での「県民投票」であれば、私は闘い方の手法としては首肯する。そのことなしの県民投票は「中策」の評価しかできない。
 国策によって、常にもてあそばれ、その上、沖縄県民を分断させている、日本国民の一員に籍を置きながら、何もできない自分自身を恥じ入ってばかりいる。こんな迷いを抱えながら、出会った良著がある。「沖縄は孤立していない」(乗松聡子編著『株式会社金曜日刊』)である。ぜひ、多くの方が読んで欲しい。世界中の良識者が沖縄に心を寄せている。あきらめてはおれない。

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